リファラル採用は、注目度がどんどん高まっていますが、社員が自社に人材を紹介するという基盤がない日本では、制度の設定をしたものの、期待する効果が得られず、リファラル採用に失敗している企業も多くあります。
なぜリファラル採用に失敗するのでしょうか?
失敗せず成功させるためには、社員の行動や気持ちを変える企業の取り組みが必要です。
そのために企業が行うべき対応をご紹介します。
→「うまくいくリファラル採用のやり方」
目次
1.リファラル採用の失敗とは
リファラル採用は、労働人口の減少などにより、採用が難しくなっているなか、うまく活用できれば、採用コストやミスマッチを減らすことができる、とても魅力的な採用方法です。しかし、うまくいかなければメリットはありません。
では、リファラル採用の失敗とはどんな状況でしょうか。大きく3つの状況が考えられます。
- 紹介してくれる社員が少ない(いない)
- 紹介された人材が採用に至らない
- 採用しても定着しない
このような状況になる場合はたいてい、リファラル採用の制度だけ設定し、社員に数回紹介の依頼をしただけ、といった場合です。
紹介することで得られるメリットが社員に伝わらず、むしろ紹介する友人との関係が悪化しそうで、デメリットしか感じていないのではないでしょうか。
たとえ紹介があっても、どんな人を紹介すればいいのかわかっていなければ、会社の望む人材とはマッチしない可能性も高いです。
これまで会社が行ってきた採用活動を、社員にも協力してもらうためには、制度の設定だけではなく、協力しやすい仕組みや環境を整える必要があります。
では、社員が自社に人材を紹介する流れについて、協力しやすい仕組みや環境をご紹介します。
社員が自社に人材を紹介するには…
大きく5つのステップが考えられます。
2.自社に人材を紹介するために必要なこと
人材を紹介する5つのステップをスムーズに社員が進むためには、何が必要でしょうか。
(1)紹介できる知り合いがいる
知り合いが社内の人間ばかりでは、紹介したくても紹介できません。社員に人材を紹介してもらうためには、社外の知り合いを増やしてもらう必要があります。
そのためには、社外での交流を会社が積極的に推奨することや、セミナーや研修の費用を補助するなどのサポートができます。
また、社外交流の時間を取れるよう労働時間の管理も必要でしょう。
(2)紹介したいと思える会社
「うちの会社はやめておいたほうがいいよ」などと社員に言わせる会社では、リファラル採用は無理です。社員の満足度を高めて「今の会社で働くよりも、うちの会社で働いたほうがいいよ」と言わせる会社にしなければいけません。
そのためには、
- 正当な評価
- 適切な仕事量
- 適切な労働時間
- 柔軟な働き方
- 適切な教育制度
など、働きやすい労働環境を実現する必要があります。
(3)紹介する時間や心の余裕がある
誰かに自社を紹介するためには、その時間が必要です。落ち着いて話すには心の余裕も必要かもしれません。労働時間や仕事量、職場環境が整備されていれば、それだけの余裕を社員が持てるのではないでしょうか。
(4)誰でも負担なく紹介できるシステムがある
働く場所を変えることは、人生を変えてしまうことになりますから、精神的な負担になりかねません。そんな負担をできるだけなくすことで、社員が紹介しやすくなります。
リファラル採用をシステム化したり、紹介といっても即面接ではなく、気軽に話をする場を用意するなど、紹介の心理的ハードルを下げる工夫をすることで負担を減らすことができます。
(5)紹介制度や内容を理解している
社員へのリファラル採用の周知徹底も必要です。
社員が常に「誰かいい人はいないかな?」と探すようになる必要はありませんが、仕事の話になったとき、自然と制度を思い出してもらえるような働きかけが必要です。
どんな人材が欲しいのか、どんな手順で紹介すればいいのか、など継続して社員に通知します。正確な情報を周知することで信頼関係の悪化や、ミスマッチを避けることにもなります。
(6)紹介することにメリットを感じる
紹介することで紹介者が嬉しくなることも重要です。
例えば
- いい会社を紹介できて友人に感謝される
- 一緒に働くことで自分の仕事がしやすくなる
などです。
たとえ入社にいたらなくても「社外の人事担当と話せる機会を提供できたことで友人の助けになれた」といったポジティブな気持ちを持てるような、制度作りもポイントです。
紹介することで報酬が得られることはメリットの一つですが、報酬が逆に紹介のハードルを上げる可能性もありますし、法律に抵触しないかどうかにも注意が必要です。
職業安定法 第四十条(報酬の供与の禁止)
労働者の募集を行う者は、その被用者で当該労働者の募集に従事するもの又は募集受託者に対し、賃金、給料その他これらに準ずるものを支払う場合又は第三十六条第二項の認可に係る報酬を与える場合を除き、報酬を与えてはならない。
誰かを紹介することで報酬を得るためには、原則として免許が必要です。ただし、自社の社員への「賃金や給料」としての報酬は認められています。
社員への報酬制度を設定する場合は、賃金規定や就業規則にその旨を記載し、紹介自体が業務とみなされない額に抑える必要があります。
当事務所では、就業規則の作成のサポートも行っております。
リファラル採用を導入している企業のうち、約3分の1が金銭的な報酬を設定していないというデータもあります。
3.会社がすべきこと
以上のことから、リファラル採用の失敗を避けるために、企業がすべきことは大きく3点です。
(1)労働環境の整備
紹介する時間を作るためにも、紹介したいと思わせるためにも、労働環境の整備が第一です。労働環境を良くすることは、社員の離職率を下げるなど、会社自体の価値を高めることができます。ですから、リファラル採用以外の採用にもよい影響を与えます。
(2)リファラル採用のシステム整備
リファラル採用をシステム化するとは、
- 紹介手続きを簡素化する
- 選考基準を明確化する
- 採用情報を定期的に継続して社員に通知する
などがあります。
システム化することで、紹介のハードルを下げ、正しい情報を社員が理解することで人材のミスマッチを減らすことができます。
最近では、リファラル採用専用のサービスも増えています。
「Refcome」「MyRefer」「GLOVER Refer」など。
(3)紹介しやすくするサポート
社外交流への補助や、友人との食事代の補助、紹介手順の明確化など、社員がリファラル採用に参加しやすくするサポートも成功するために必要です。
ある会社では、社内で社外の友人と食事をとれるよう、夕食を無料で提供しています。ほかにも社外の人も参加できるイベントを定期的に実施している会社もあります。
紹介しやすくすることは、決して紹介を強要することではありません。紹介のノルマを設定したり、紹介しないことで不利益を与えたりすることは、結果的に社員のモチベーションを下げ、悪循環をもたらします。
4.企業の負担やデメリットを減らす方法
これまでご紹介してきたことは、社員側にとっての様々な壁を解消する方法です。すべてを実現し、効果が出るまでには時間がかかり、人事担当者の負担が増える恐れもあります。
一部の担当者に負荷がかからないようにするためには、経営陣全体を巻き込んだ取り組みが必要です。リファラル採用を成功させるための取り組みは、会社全体の価値を高め、利益をもたらすものであることを認識し、会社全体の方針として進めることです。
また、リファラル採用は万能ではなく、特性上のデメリットもあります。
- 人間関係の悪化
- 志望動機の低さ
- 即効性の低さ
- 人材の偏り
これらは、採用システムの工夫で克服することもできますが、他の採用方法との併用も考慮する必要があります。
当事務所では、求人に関する様々なサポートを行っております。また、就業規則や給与規定の作成・改定についても承っております。お気軽にお問い合わせください。