SNSを使って採用活動を行う「ソーシャルリクルーティング」が注目されつつあります。企業のSNS活用といえば、飲食店などお店のPRや、大企業の広報といったイメージがあるかもしれませんが、最近では、顧客獲得だけでなく、人材採用にも活用され始めています。
ソーシャルリクルーティングは、採用にかかるコストを抑えられるだけでなく、入社後のミスマッチを減らすことも期待できます。
現在でも、求人サイトや転職エージェントを活用した採用は広く利用されていますが、人手不足と言われる中で、よい人材を確保するために、新たな採用方法を活用する企業も増えています。
目次
ソーシャルリクルーティングとは
ソーシャルリクルーティングとは、SNSを活用した採用活動のことです。活用されている代表的なSNSとして、Facebook、Twitter、Instagram、LINE@などがあります。
また、日本ではあまり浸透していませんが、アメリカを中心に世界で5億人以上が登録しているLinkedIn(リンクトイン)というビジネスに特化したSNSもあります。
(1)コストを抑えた採用活動ができる
SNSは登録や情報発信に費用がかからないため、SNSだけで採用ができれば、確実にコストを抑えることができます。
(2)入社後のミスマッチを減らせる
企業が採用情報以外の社内情報を積極的に発信することで、社内の雰囲気が伝わり、目にした人が働くイメージを持つことができます。
企業側としては、求職者の個人情報を得やすく、普段の様子も知ることができます。また、SNSではメールよりも気軽に個別のやり取りをすることができ、細やかな対応も可能です。
求人サイトよりも、現実的な情報を企業と求職者どちらも得ることができるため、入社後の違和感、ミスマッチを防ぐことにつながります。
(3)潜在層にもアプローチできる
求人サイトの場合、閲覧するのは転職をすでに検討している「顕在層」だけです。しかしSNSの場合、転職を検討していない人の目にも留まる可能性があります。なんとなく見ている中で目にする場合や、情報が拡散される中で目に留まる場合もあります。
今、転職したいと考えていなくても、今後転職したいと考えるようになる人もいますし、今の会社よりも働きたいと思える会社が見つかれば、転職を考える人もいます。
有能で会社からも正当に評価されている人なら「転職したい」とは思っていないのではないでしょうか。「潜在層」には貴社が希望する人材がいる可能性が高いのです。
ですから転職を考えていない「潜在層」にも求人をアプローチすることは、決して無駄なことではありません。
それぞれのSNSの特徴
「SNSでの採用を試してみよう」と思ったとき、どのSNSを選べばよいのでしょうか?それぞれ特徴がありますので、欲しい人材が多く利用しているSNSを選ぶ必要があります。
実名登録が原則であるため、他のSNSよりもいたずらや誹謗中傷といった問題が起こりにくいといえます。活用している年齢層は30代~40代が中心のため、管理職など経験を積んだ人材を希望する場合に適しています。
ユーザー数:およそ2,800万人
ユーザー層:30代~40代中心
アクティブユーザー率:約50%
ユーザー数がおよそ4,500万人と非常に多く、10代~20代が利用者の中心です。若手の採用を希望する場合には、ぜひ活用を検討してください。
有名企業のユーモアたっぷりのツイートが話題になることも多いように、Twitterを活用する場合は、親しみを持たれるような、少し気楽な雰囲気の投稿が適しています。
ユーザー数:およそ4,500万人
ユーザー層:10~20代中心
アクティブユーザー率:約70%
画像による、社内の雰囲気や社員の様子を伝えやすいのが特徴です。利用者は特に20代女性が多いので、希望する人材に当てはまるか注意が必要です。
楽しそうな雰囲気やおしゃれな雰囲気など、社内の空気感が伝わるような画像が必要になります。
ユーザー数:およそ2,900万人
ユーザー層: 20代中心
アクティブユーザー率:約85%
・LINE
7,600万人以上という圧倒的な利用者数と、幅広い年代に浸透しているのが特徴ですが、企業が利用できる「LINE@」だけでは、周知が難しいという問題があります。
「LINE@を活用している」という情報を何らかの形で広める工夫が必要です。
※企業が利用できるLINEサービスには「公式LINEアカウント」もあります。
無料スタンプを配布するなどで周知することができますが、利用登録に大きなコストがかかります。
「LINE@」なら無料で登録ができます。
ユーザー数:およそ7,600万人以上
ユーザー層:10代~50代
アクティブユーザー率:約85%
国内での活用はまだあまり期待できませんが、他社がまだあまり手を付けていないという点では、穴場といえるかもしれません。グローバルに活躍したい人が多く活用している傾向がありますから、そういった人材を探しているなら活用を検討してみてはいかがでしょうか。
ユーザー数:およそ200万人
ユーザー層:30代~40代中心
※ユーザー数等の情報は、2019年2月時点の国内のもの
SNS採用の運用方法
自社にあったSNSを検討したところで、具体的にどう活用していけばいいのでしょうか。
アカウントを作り、ただ求人を出してもおそらく効果はないでしょう。
定期的に様々な情報を発信し続けることで、フォロワーを増やし、人の目に留まるような工夫が必要です。
(1)プロモーション
SNSでは簡単に最新の情報を発信することができます。外からはわからない会社内部のことを定期的に発信することから始めてください。
例えば
- 社内イベント
- 新製品情報
- 社員紹介
- 業界情報
などを定期的に発信し続けます。
一時的な取り組みで終わらないように注意が必要です。情報発信に一時的に力を入れても、その情報はすぐに古くなってしまいます。古くなった情報だけが残ると、かえってその情報が、「継続して取り組めない会社」という悪いイメージを与えてしまいます。
(2)コミュニケーション
SNSは相互にコミュニケーションが取れるサービスです。ただ、企業情報を発信するだけでなく、閲覧者からの声に丁寧に対応することも企業価値を高めることにつながります。
(3)広告
費用は掛かりますが、SNSには広告を掲載することも可能です。SNS広告は、広告を表示するターゲットを細かく設定できる利点があります。興味を持つ可能性の高い人にだけ広告を表示するため、コストを抑えて高い効果を期待できます。
求人情報を利用者の目に留まるようにするには、広告も一つの手段です。
SNSでの求人が簡単にできる「bosyu」というサービスもあります。
無料で利用でき、専用サイトで作成した求人情報をFacebookやTwitterでシェアすることで簡単に求人が可能です。
実際の活用例
実際にSNSを活用した採用を行っている企業をご紹介します。
・SoftBank
Facebookを活用した新卒採用ページです。
若手の社員インタビューを積極的に掲載するなど、より細かな情報発信になっています。
SoftBank新卒採用Facebook
・学研グループ
Twitterにて社員紹介動画を紹介し、LINE@への誘導を意識した投稿になっています。
学研グループ採用Twitter
・mercari
事業・バリューへの共感を生み出すことを採用への第一歩とし、ビジネスプロフェッショナルの交流ができるLinkedInを活用することで、半年間で複数名の内定を出しています。
mercari LinkedIn
参照:「株式会社メルカリ お客様事例」
運用の注意点
SNSでの採用活動はコストが抑えられますが、簡単に効果を出せるものでもありません。運用するうえでの注意点もあります。
(1)継続する
とにかく継続することが大切です。一時的に大量の発信を行うだけで放置するぐらいなら、利用しないほうがいいです。発信した情報はすぐに古くなり、古い情報だけが残り続けている状態は会社への悪印象になります。
内容へのこだわりよりも定期的に発信し続けられるよう、無理をしすぎないことが大切です。担当者一人に任せきりにするのも避けたほうがいいです。
(2)トラブルに注意する
SNSでのトラブルといえば、炎上や乗っ取り、個人情報の取り扱いなどがあります。
特に不適切な投稿には注意が必要です。Twitterでの不適切な発言が問題視されるニュースを目にしたことがあるはずです。ほんの少しのミスが瞬く間に広がり、重大な問題に発展する恐れもあります。どういった投稿が問題視されるのか、事前に把握し、投稿には細心の注意が必要です。
(3)スマートフォンの表示をチェックする
会社の業務ではパソコンを使用することがほとんどですが、SNSはスマートフォンからのアクセスが大多数であることも意識しなくてはいけません。
PC画面では見やすいものも、スマートフォンでは小さすぎて見えないといったこともあります。
SNSでの採用活動はリスクもありますが、特徴を理解して活用することで、新たな採用市場への効果が期待できます。
今後は、アメリカで誕生した企業の口コミサイト「glassdoor(グラスドア)」というサービスが、2018年リクルート社に買収され日本にも上陸します。
このサービスは、退職者や現役の社員がリアルな会社情報を提供するものです。
採用広告だけを頼りにする時代ではなくなり、採用のためには社内の人事・制度整備が重要事項となってきます。
早めにご相談をいただき、社内体制を整えていきましょう。
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